米国法人テックポイント・インクの役員インセンティブ

テックポイントは、2012年4月に設立されたデラウェア州法に準拠して設立された米国の会社です。

監視カメラ等向けの半導体開発会社で、小里文宏氏がCEOを務めています。

公開価格は650円、PER24.1倍(2017年12月予想EPSによる)という水準で、2017年9月29日にマザーズに上場しています(有価証券信託受益証券の募集)。

この会社、米国の会社ということで、役員のインセンティブが日本の会社とは違っています。日本の上場準備会社が参考にできるところもありそうなので、少し紹介してみます。

まずは、役員の状況です。

買戻権を保有する未確定の普通株式とは、リストリクテッド・ストック(RS)と思われます。

米国連邦所得税法上、RSの取得者は、権利確定時にその時点の公正市場価額により通常所得として課税されるのが原則ですが、付与時に制限を考慮しないその時点の公正市場価額により課税されることを選ぶこともできます。その場合には、その後の値上がり益は、キャピタルゲインとして課税されることになります。

次は直前期(2016年度)の執行役員の報酬です。

そしてこれが上場期(2017年度)

共同創業者であるCEOの小里氏とCTOのクー氏に付与されたストックオプションは、5年間かけて均等に権利確定していくタイプであるのに対し、2016年に入社したCFOのティーガーデン氏は雇われた立場なので、約1年後に付与されたオプションの5分の1の権利が確定し、残りは4年間かけて毎月均一に権利確定する設計になっています。また、ティーガーデン氏に付与されたオプションは早期行使が可能であるのに対し、小里氏とクー氏に付与されたオプションは早期行使できないものになっています。

社外取締役は4名いますが、現金報酬は支払われておらず、一定の期間に渡り権利確定するタイプのストックオプションが付与されています。行使価格は、付与日の普通株式の公正市場価格であり、2016年2月16日付与分が0.97ドル、2016年8月18日付与分が2.51ドル、2017年8月10日付与分が3.18ドルです。またすべて早期行使が可能になっています。

ちなみに、以下のように残余財産分配に関する優先権が付与されている優先株式(シード、シリーズA、シリーズB)が発行されています(議決権あり)。

2014年が赤字なので、2014年時点の普通株式の株価は2016年〜2017年の株価を相当に下回っていたと考えられることから、2016年〜2017年に役員に付与されたストックオプションの行使価格は、優先株式の株価に比べ有利な価格になっていたと思われます。

優先株式の株価が普通株式の株価の10倍となるいわゆる10倍ルールを適用しているかどうかはわかりませんが。普通株式(創業者株式)と優先株式の株価に差をつけることで、資金調達を進めつつ創業者の持株数を確保し、ストックオプションをインセンティブとして利用する資本政策となっています。

 

 

 

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